『数学U』『数学B』の問題点


『受験研究舎 リュケイオン』のホームページを見て、旧課程における数学Uの分量がかなり増えたことを問題視されているということを知りました。以前の項でも述べましたが、旧旧課程では中学校で扱っていた内容を高校1年で学習することになったため、旧旧課程では高校1年で学習していた内容の一部が、高校2年で学習することになったというものです。
 そして今回の改訂で、前項でも述べたとおり、旧課程では高校1年で扱っていた、『3乗の乗法公式・因数分解』『二項定理』が数学Uの内容になってしまいました。逆に高校2年で学習していた内容が高校1年の内容になった、というのは、ありません。数学Bの『数値計算とコンピュータ』『統計とコンピュータ』は旧課程でもほとんどの高校で扱っていない内容ですから、その内容の一部を高校1年で扱ったとしても、高校2年の内容を先取りしたとは言えないからです。

 数学Uで扱う単元は、以下のようになっています。

@式の計算と証明
A複素数と方程式
B図形と方程式
C三角関数
D指数・対数関数
E微分・積分の考え

 学習指導要領の変遷とともに、昔は高校1年で学習していた内容が、高校2年の内容になってしまっています。管理人の受けた課程は、旧旧課程の最後の年でしたが、『B図形と方程式』までは、その前の過程(すなわち、旧旧旧課程)では高校1年で学習する内容だったのです。これは、高校1年では以前までは中学内容であった『高校数学の基礎』を学習しなければならなくなったため、以前までは高校1年、2年の2年間をかけて学習していた、『高校数学』のほとんどの内容が、高校2年の1年間に圧縮された、といってもいいでしょう。これは仕方のないことなのかもしれませんが、「高校数学においては、ここまでは基本だろうwww」と思えるような内容が、ことごとく高校2年の内容に回されているということには、怒りしかわいてきません。

『受験研究舎 リュケイオン』のホームページから、先日『看護系ならコレ! 〜数と式編〜』を購入しました。これは旧課程における数学Tの内容ですが、11ページ目の展開公式の一部の内容が、数学Uの内容になってしまいました。

(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
(a-b)3=a3-3a2b+3ab2-b3
(a+b)(a2-ab+b2)=a3+b3
(a-b)(a2+ab+b2)=a3-b3

 こうなりますと、以前までは★(公式や解説部分の基本事項“のみ”で解ける問題)や、★★(少し応用が必要で、入試で最も出題頻度が高い問題)が、★★★★(数学TAの単元ではないが、過去に実際に出題されたことがある問題)になってしまうのです。

 またこの本には、『剰余の定理』という旧課程から数学Uの内容になった問題も、付録としてつけられています。解答解説の本を見てみますと、最後のページになりますが、「こんな問題も過去に出たとは! 看護系恐るべし…」というふきだし漫画があります。旧旧課程では数学Aの内容でしたので、数学TAを試験範囲としている以上、旧旧課程では出題されて当然です。しかし旧課程では数学Uの内容になっています。
 このことにツッコミを入れるなら……

 こんな問題が高校2年の内容になってしまったとは! 学習指導要領の変遷恐るべし… になるはずだろ!


 さて、数学Uでどうしても許せないのが、対数の扱いです。管理人は、対数と分数は似ていると考えています。分数の場合、現課程では以下のように学習します。

小学2年生 分子が1の分数・分数の概念
小学3年生 真分数
小学4年生 仮分数・同分母の分数同士の加減
小学5年生 異分母の分数同士の加減
小学6年生 分数同士の乗除
中学1年生 分数の含んだ1元1次方程式
中学2年生 分数の含んだ2元1次方程式
中学3年生 分数の含んだ1元2次方程式
高校1年生 分数の含んだ1元1次不等式など
高校2年生 分数式計算
高校3年生 分数関数

 分数は各学年で散らばっていますね。ところが対数はどうでしょう? 高校2年で対数の概念から底の変換公式、対数の計算から対数関数のグラフ、対数方程式や対数不等式まで、わずか1か月にも満たない程度で詰め込もうとしていますね。高校2年の理系で、数学Uをやってから数学Bをやる場合、遅くとも高校2年の1学期までに対数関数までを終わりにしないといけません。『微分・積分の考え』『ベクトル』『数列』は、意外とやること多いのです。
 短期間に詰め込んだものは、短期間で忘れてしまいます。対数の高校2年での詰込みはよくありません。やはり、小学校の時から学習しておく必要があるのです。


 最後に取り上げるのは、数学Bの『数列』です。管理人の課程では数学Aであり、高校1年で学習していました。高校2年の内容になってしまったのは致し方ないこととはわかっているのですが、なぜ数学Uではなく、数学Bなのかが理解不能です。というのも、文部科学省という悪の組織が公表している、学習指導要領概説というのがあるのですが、『数学V 数列の極限』にて、以下のようなことが書かれています。

 この単元(数列の極限)は、『数学B(数列)』を学習していない生徒が履修することも考えられるので、その点での配慮が必要である。

 数学Bと数学Vがつながっていないということなのでしょうけれど……


 ふざけたことを言うのもいい加減にしろ!


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