小学1年生の児童に教育漢字を叩き込ませようとする小学館


 小学館といえば、どんなものを想像しますか? ドラえもんとかいうのではないでしょうね? それはあながし間違っていないと思います。そんな小学館ですが、「小学一年生」という雑誌で、とんでもないことをやらかしてしまいました。

 2017年8月31日ごろに発売された、「小学一年生10月号」です。ドラえもんの秘密道具をもじった、「アンキパンメーカー」が付録としてつけられたものですが、「小学校6年間ずっと使える! 学習漢字1006+20の本」というのもついてきました。小学校で学習する漢字をすべて、1冊の冊子にまとめたというものです。

 以前までは「小学一年生」のほかにも、「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」「小学六年生」という雑誌を出していたのですが、それらがすべて廃刊となったために、以前までは「小学一年生」〜「小学六年生」の6冊に散りばめられていた小学校教育のすべての内容が、「小学一年生」という1冊の雑誌に圧縮されてしまったのです。

 ちなみに、小学校で習う漢字のことを教育漢字といい、1年生では80字、2年生では160字、3年生では200字、4年生では200字、5年生では185字、6年生では181字の漢字を現課程では習います。管理人も、3年生になったあたりから、急に漢字の量が増えたなー、と感じるようになりました。

 そんな1000字以上もの漢字を小学1年生の児童に叩き込もうというものですから、一般の人から見れば、小学館のやっていることは『異常』『非常識』としか言いようがありません。


 しかしこれ、暗記のメカニズムから言えば、そんな学年ごとにちまちまと学習するよりも、最初に一気にドッカーンとやって、6年間かけて反復練習するようにしたほうがいいのです。ですから、もしこれをお持ちのご家庭があれば、ぜひとも2年生以降に学習する漢字についても、この段階で先取りして学習させてもいいのではないのでしょうか。

 とくに効率の良い教材としては、「てんとう虫コミックス」が挙げられます。「なぜ漫画が……」と思われるかもしれませんが、「てんとう虫コミックス」の場合、とくにドラえもんなんかは顕著ですが、小学1年生の児童でもわかるように、漢字にルピが振られているものです。漢字そのものだけでなく、使う場面をも理解させるのに、ちょうどよいものとなります。

 2018年3月に、「映画ドラえもん のび太の宝島」が上映され、特設サイトもあります。「3月3日大航海!」と書いてありますが、それは、劇場は船であり、スクリーンを通じて、ドラえもんたちとともに、宝島へ向けて冒険の旅へ出かけよう! という小学館(藤子プロ?)から子どもたちへメッセージを送るための、一種の掛詞です。上映することの「こうかい」というのは、「公開」という漢字を使わないとだめです。このように漢字は熟語、用法で覚えるようにしないと、とんでもない間違いをすることになります。



 それではここで、小学1年生の児童に1000字以上もの漢字を一度に覚えさせようとする、こんな世間から見れば非常識ともいえるやり方をやった小学館の本音(の推測)を聞いてください。


 皆さんは、常用漢字というのはいくつあるか知っていますか?
 常用漢字というのは、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安となるもので、内閣が告示する「常用漢字表」に示された日本語用の漢字のことです。いわば義務教育中に覚えなければならない漢字です。要するに、常用漢字から教育漢字を差し引いたものは、中学校で登場する新出漢字ということになります。

 答えは、2136字(2010年現在、いわば現課程)です。
 ここから教育漢字1006字を差し引くとどうでしょうか? 1130字ですね。これが中学校で登場する新出漢字になります。どうですか? 相当多いでしょう? しかも、小学校は6年間あるのに対し、中学校はたったの3年間しかありません。3年間で1130字って、1年間で375字以上も新たに学習するということになります。

 翻って、小学館の出した本のタイトルをもう一度見返してください。小学6年生までに、1006+20の漢字を学習するとみてとれますね。この20とは何のことでしょう?

 答えは、「現課程では『中学校で登場する新出漢字』だが、新課程では『教育漢字』になる漢字」です。次の20字が挙げられます。

茨、媛、岡、潟、岐、熊、香、佐、埼、崎、滋、鹿、縄、井、沖、栃、奈、梨、阪、阜

 これは日本の都道府県名に使われている漢字ですね。注意しなければならないのは、これらの漢字でも現課程では中学校までに学習する漢字(=常用漢字)なのです。新課程では教育漢字が20字増える分、中学校で登場する新出漢字は20字減るということです。

現課程 教育漢字:1006字 中学校で登場する新出漢字:1130字
新課程 教育漢字:1026字 中学校で登場する新出漢字:1110字(予定)

 それでも新課程においても、中学校では1年間あたり370字もの新出漢字に触れることになります。小学校2年分ですよ? とんでもない量ですよね。ですから小学6年生の春を迎えるころには、教育漢字をマスターして、小学6年生の1年間をかけて、中学校で登場する新出漢字も250字程度先取りして学習を進めるのが理想、というのが小学館の本音なのだと推測します。逆に言えば……


 小学校を卒業するまでに、小学校で習う漢字(=教育漢字)をマスターしておかなければ、お話にならない!


……ということです。管理人の場合、小学6年生の冬休みのしおりにて、上記の文を目にしました。そんな時期に言われても、遅いですよね。もう小学1年生の時から、スパルタ教育を施さないといけない、という危機感があるわけです。


 そして中学生はあまりの新出漢字の多さに頭を悩ませるのです。そこで文部科学省という悪の組織が登場します。「そうか、今の中学生は、新出漢字の多さに悪戦苦闘しているのか……ならばこうしよう」と身を乗り出します。結局失敗に終わりましたが、もう少しでとんでもないことをやらかすところでした。それについてはおいおい解説することにしましょう。


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