数学は穴を作るな 〜段階別学習の奨め〜
前項で述べた『単元別学習』の欠点は、それが認知されていないまま、『単元別学習』が一般化してきています。和田秀樹様の著書、『勉強法マニュアル』にも、たとえば数学の『2次関数』を学習したら、青チャート等を駆使して解法を暗記し、一気に入試レベルまで仕上げるという、『単元別学習』を推奨しています。
さらに言うなら、多くの教材は単元別に構成されていますし、直前の定期テスト、模試の点数向上に有利なのは、範囲がきちっと定まっている単元別学習です。ですから、定期テストや模試のための勉強として、単元別学習を推奨する指導者は、非常に多いのです。
ところが、そのように単元別に入試レベルまで仕上げたとしても、現在の入試で得点できる保証はどこにもありません。
たとえば、とある受験生が受ける大学は、数学Aの『確率』が入試頻出だということで、この単元だけでも入試レベルまで仕上げようとして、実際に仕上げてきました。そして入試本番、数学の問題冊子を開いて、『確率』の問題がないかチェックしてみました。やった! あった! と喜びました。ところが、その問題は……
サイコロを3回投げて出た目の数をそれぞれ順にa、b、cとし、xの2次方程式
2ax2+bx+2c=0
を考える。このとき、(1)から(3)の事象が起こる確率をそれぞれ求めよ。
(1)この方程式が実数解をもつ。
(2)この方程式が実数でない2つの複素数解α、βをもち、かつαβ=1が成り立つ。
(3)この方程式が実数でない2つの複素数解α、βをもち、かつαβ<1が成り立つ。
やべぇ、と思うことでしょう。数学Uの『複素数と方程式』の勉強をやっていればいいのですが、大学入試センター試験には出た試しないし、理系なら数学V『複素数平面』のほうが重要だろうと思っていたのです。ですからこの問題は、『確率』の問題であっても、まったく手を付けられないのです。
実はこの問題、東北大学の2015年度の第3問です。文系理系共通で、(3)は理系のみの問題です。どうですか。一見確率の問題に見えても、複素数のことも問うているのです。さらに理系数学では、この翌年になりますが、a、b、cがある直角三角形の3辺の長さとなる確率、ある鈍角三角形の3辺の長さとなる確率を求める問題が出題されました。確率だけでなく、図形の知識も必要になってくるのです。
何が言いたいのかといいますと、現在の高校数学はやることが多すぎるのです。ですから少しでも多くのことをテストするために、1つの大問に複数の単元をぶち込むやり方が常套手段になっているのです。
つまり、1つの単元だけを集中して学習しても点を取れるような問題はあまり出題されません。高校数学全単元を総合的に、統合的に理解できて、初めて得点できるようになっています。
和田秀樹様や下の動画(前項に引き続きまた出します)における松原一樹様の時代とはわけが違うのです!
穴は深く掘れ。そうすれば自然と広がる。
こうありますが、管理人はこれを真っ向から否定します。
数学は穴を作るな。さもなくば自然と広がる。
数学で欠けている知識があると、そこからどんどんわからないところが広がっていって、最終的にはどこがわからないのかわからない状態になってしまいます。
たとえば、自分はベクトルが苦手だから、『ベクトル』の単元だけが詰まった教材をやりなさい、という指示ならまだしも、どこがわかっていてどこがわかっていないのかもわからない状態で、単元別に学習することは、非常に愚かなのです。
まとめますと、高校数学は『単元別学習』ではなく、『段階別学習』で。
高校数学全単元の基礎⇒高校数学全単元の応用⇒高校数学全単元の発展
このように進めていくと、いろいろなメリットがあります。
・基礎が終わってから応用、応用が終わってから発展、と学習するため、混乱が生じにくい。
・全単元を繰り返し学習するスタンスのため、単元ごとの時間投資が局所最適化しにくい。
・学習の始めのうちは簡単な問題にしか触れないため、問題を解けた、即答できたなどの成功体験を得やすく、結果として継続が容易。
一方で、『単元別学習』は……。
・ある単元について基礎から応用、発展レベルまで一気にこなそうとすると、混乱が生じやすい。
・前の単元から順番に学習していくため、単元ごとの時間投資が局所最適化しやすい。
・勉強習慣が未熟なうちに成果の出にくい応用、発展問題に取り組もうとすると、勉強計画の破綻や、勉強そのものにくじけることにつながりかねない。
百害あって一利なしです。
まずは継続しやすさを意識して!
数学ができる人とできない人の違いは、“当たり前のように”数学を継続して勉強しているかそうでないか、です。
画像は、『魔法使いプリキュア!』第13話のAパートのクライマックス。一生懸命勉強している姿が見受けられます。
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